中川産科婦人科ドクターのプレママセミナー

第26回:甲状腺ホルモンと妊娠について


甲状腺の病気は、妊娠前から存在している場合もあれば、妊娠中に発症する場合もあります。
妊娠しても甲状腺の病気の症状に変化はありません。
胎児への影響は、甲状腺の病気の種類と治療薬の種類によって異なります。

 甲状腺は、喉ぼとけのすぐ下にある蝶が羽を広げたような形をしている重さ10~20g程度の小さな臓器です。甲状腺ホルモンは神経の増殖と成長に必要です。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病):甲状腺のホルモンが多すぎると、沢山汗をかいたり、食欲旺盛なのに体重が減る。活発になっているのに疲れやすく、動機が1日中する。などの症状がでます。
甲状腺機能低下症:甲状腺のホルモンが少なすぎると、寒気がしたり、皮膚が乾燥したり、食欲がないのにも関わらず体重が増える。体がだるく、無気力となり、いつも眠気を感じるようになる。などの症状がでます。
 甲状腺ホルモンは胎盤を通して胎児に移行し、胎児の知能を含めた身体発育に極めて重要な働きをします。軽度の母体甲状腺ホルモン不足があると胎児発育および妊娠経過に悪影響(流産・早産など)を及ぼします。妊娠中のヨウ素欠乏症は、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の要因になり、知能低下や運動機能障害をもたらします。明らかな甲状腺機能異常があると不妊、流産率が高くなり、妊娠前と妊娠初期のTSH(甲状腺刺激ホルモン)値を2.5μU/ml未満にするよう推奨しています。また「産後の肥立ちが悪い」とか「育児ノイローゼ」などといわれてきた症例の中に、出産後の甲状腺機能異常が原因と考えられる症例が少なからず含まれていると考えられています。その臨床症状については、出産後以外に発症する場合と特徴的な差異はありませんが、出産後は育児のことなども重なり、その症状が甲状腺機能異常によるものか、あるいは単なる不定愁訴なのか、血液検査などを行わないとわからないこともあります。
 正常出産後婦人に比して、出産後甲状腺機能亢進症を呈した場合には、心悸亢進、疲労感などを感じる場合が多く、出産後甲状腺機能低下症を呈した場合には、肩こり、疲労感、食欲低下、便秘などの症状が出る場合が多いといわれています。
 出産後には、疲労や気分のむら、食欲の低下、不眠などの、「出産後うつ状態、あるいはうつ病」として最近注目されている症状がおこることが少なからずありますが、このような場合にも、出産後の甲状腺ホルモンの変動、特に出産後甲状腺機能低下症の可能性もあります。
 妊娠を希望される方、家族に甲状腺疾患を有している方や症状が類似している方は血液検査を受けてみましょう。





43〜_中川産科婦人科_副院長